<life>fool</life>

愚者の人生。

 潜在的にはヒーローの存在を渇望しているし、自分がそれで在りたいと思っている。そう思ってウンザリした。

 その人の身丈、声色、眼のかたち、何も知らないと言うのに、何も知らないのだからこそ冷静さを保たなければいけないと解っていたのに、突如として沸き起こった嵐のような感情の渦巻きが形を為してこの双眸から流れ出す。変身ベルトの存在し得ないことを憂う。子供じみている。

 親が死んでも腹が減る。どんなにか悲しいことが起きたとしても、自分の立つ大地を一時揺るがしているかのような錯覚をこの身に感じさせるものだったとて、不意の眠りは妨げられない。ひとがひととして生きるための諸機能を憎む。だがこれは間違いだ。憎むべきでなく哄笑するべきなのだ、本当は。そんなことは幾度も幾度も言い聞かせてきた。

 ひととき、全てを忘却してただ泣いた。少しすると、もう笑えるようになる。まだ生きている。この世に生まれ来たるものの一切が屑である、などということはないから。もしそうなら、誰も読まない。誰も書かない。何も生まれない。だから。