<life>fool</life>

愚者の人生。

『パシフィック・リム』

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 監督自ら「巨大怪物の美しい詩」であり「自身の日本へのラブレター」であると語った本作は、言葉通り美しく愛に満ちた歪な映画であった。どだい美しい詩や恋文などというものは真実その身をかけて精魂注ぎ込んで創られるものであるのだから、それが歪でないことがあるだろうか。舞台背景や怪獣の出現理由などを全てナレーションと映像で済ませる冒頭は、この映画が小手先の物語に頼ったものではないという意志の表明だ。主役は巨大ロボと怪獣だ。伝えたいメッセージはターゲットとする子どもが理解しやすい平易なものだ。子どものころ魅了された日本製のアニメや特撮を自らの手で再構成するのだから、贈る相手はあくまで「日本の子ども」なのである。

 ロボと怪獣の添え物程度に置かれた物語、そのひねりの無さや革新性の無さは、腐そうと思えばいくらでも腐せるものだ。だけれども王道を堂々と進みゆくその巨大なロボの勇姿を前にしては、そんな御託を並べることは無粋の一言である。*1
 タンカーを引きずりながら現れ、棒術よろしく怪獣の脳天に叩き付けるそのシチュエーションを代表にして、次々と繰り出されるあの日夢見たごっこ遊びのとんでもなく豪華な再現、その映像に全く心が踊らなかった者のみがこの作品に石を投げろと言いたい。エンドロールに現れる膨大な名前を背負いながらギレルモ・デル・トロという男が創りあげた狂気の大スペクタクルは、確かに端正という言葉とは程遠く熱意の制御も出来ていないに違いはなかろうが、端正で制御された「だけ」の詩や恋文に人の心は動かせない。俺の心を動かしたのは、迸り暴走した愛のその熱情なのである。

 試写会が終わったあと、来ていた子どもの目がキラキラ楽しそうにしていたのが印象的だった。公開が始まったらもう一度、できればIMAXで観たいなあ。デル・トロ監督ありがとう。最高でした。

*1:だいたいからして、このような作品で小手先の捻った物語を盛り込んだならばなんともどっちつかずになってしまい、観客は「そういうのいいから主役の活躍見せろよ!」という叫びを上げる羽目になるのがオチだろうよ