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<life>fool</life>

愚者の人生。

太陽の孤独 -FREE DOMMUNE 2013-

 FREE DOMMUNEに行ってきた。本当に楽しくって、フェス童貞というやつをこのイベントに捧げられて良かったなあと思った。捧げられた方は別に嬉しかないだろうけども。
 会場に居る時はもう何もかもが極上の体験すぎて、いちいち噛み砕きながらということが出来ずに、終始「やべー!やべー!」とブチ上がっておった次第なのだけど、帰って来て頭がクールダウンしてくるに従い、色々考えがまとまってきたので雑感という形で記しておくことにする。意味付けが好きな自分がなんだか阿呆らしいなあと思ったりもするけど、そういう性分であるから仕方ない。
 お目当てであり即ち丸々観た順番としてはZAZEN BOYS→BOADRUM→瀬戸内寂聴→三宅洋平→灰野敬二坂口恭平といった感じ。あとはなんか飯喰ってAMAZINGDOMEで踊って煙草吸って東浩紀の話ちょっと聴いたり海女映画で笑ったりしてた気がするけどあんまり覚えてない。初音階段も少し観たか。

ZAZEN BOYS

 お目当てと前述したが、きちんと音源を聞き込んでるアーティストはここだけ。あとはノるかソるか博打じゃ博打といった勢いで幕張メッセ行ったので、ZAZENは何というかごく当たり前に楽しかった。日比谷野外音楽堂で東京事変とSOIL&PIMPSESSIONSと対バンした時以来、つまり何年前だか解んねえくらい久しぶりに観たのだけど、びっくりするくらいかっこ良かったし楽しかった。それ以外あんま言うこと無いし、それで良いんだと思う。あ、向井秀徳がなんだか好々爺の風情を漂わせ始めていたのが印象的だったな。昔はもっとひりついてたし鋭!角!だったような気がする。向井さんだけじゃなくてメンバーがみんな楽しそうなのがなんだか良かった。パンツ一丁で踊れってしつこく言うもんだからほんとはパンツ一丁で踊りたかった。自粛した。ぶっこんでくるヴァン・ヘイレンのJUMPに俺狂喜乱舞。
 dailymotionで当日の模様が観れるみたいなので部屋で踊りたい方は是非。

BOADRUM

 お目当てその2。91台のドラム演奏ってだけでそんなもん行くしか無いやろといった感じ。で、これがとんでもなく素晴らしかった。ZAZENの演奏終了とBOADRUMの始まりが少し被っていたせいで、しばらくは人垣を観ながら音を聴くという感じだったけど、それでも地鳴りのようなドラムの打音にテンション上がりまくり。ちょっと経ってから人の壁の薄いところを目ざとく見つけてそこから先はもう、自然であり宇宙であり根源であり原始でありそれ即ち爆発でありました。よく解らんだろう、実は俺も未だによく解っておらんのです。事実、しばらくは口ポカーンであり「なんじゃこれは…」と圧倒されていたのだもの。
 けれど気がついたらもう舞よ。叩く叩く響く。体躍る跳ねる。なーんも考えてなかった。ただただ多幸感だけがあった。ドラムの螺旋の中心軸に居た山塚EYEさんはあの2時間弱の間部族の首長でありました。人間ってすごいなあって思ったよ。「自然の中に生きている人間」なのではなく「人間も自然の一部」という当たり前だけど忘れていた感覚を思い出させてくれた感じ。死ぬまでにあと何回立ち会えるか、そもそも次があるのかも解らんが、あるとしたら絶対に何度でも体験したい。本当に凄まじい音体験だった。思い出そうとしても俺のちっぽけな想像力じゃあ補い切れないんだよなあ。「そこにしか無い音」とはこういうものなんですね。
 こちらもdailymotionで冒頭から30分だけ観れるようなので是非。ヘッドホンで爆音推奨です。最初はよく解らんかもしらんけど。

瀬戸内寂聴

 瀬戸内寂聴は登場して早々こう言った。
 「若い人は、ジャッキーって呼んでね!」
 この婆さんはパンクだ、と思った。その予感は当たることになる。
 御年91歳の体から放たれる言葉の数々はユーモアに富みながらも鋭く心に響くものばかりで、これぞ宗教家の在るべき姿だと思わされた。寂聴喋る。観客が沸く。これってすげえことだよマジで。歳が上だろうが下だろうが素晴らしい言葉は心に響くもんだ。なんという雄弁か。見習わねば。
 「若い人はね、恋と革命をしなさい」
 「他人の言うことなんて気にしちゃだめ。好きなことをしろ」
 「愛情に見返りを求めるのは浅ましいこと」
 などなど太宰の斜陽だったり、パンチラインが飛び出しまくりな中で
 「今の時代は昭和16年と同じ。どういう時代だったかって言うと軍靴の音が聞こえてきた時代でね、戦争になる前の状況に似ています」
 「これからの日本を背負うのはあなた達若い人。自分たちでダメなものにはダメと言いなさい。原発も、憲法改正も、戦争も」
 という言葉には途轍もない重みを感じて背筋が寒くなったり。とにかく詰め込みまくりなアジテーションで観客を煽りに煽り、頼んだぜ若者といった風情で予定時間の90分を30分で終わらせ去って行くジャッキー。パンクだった。ベストアクトでございました。

三宅洋平

 トーク&ライブ。三宅洋平という人は元々音楽家で、今回の選挙に緑の党から出馬している。枠としては脱原発派で、山本太郎氏と交友があり今回の選挙に出馬を決めたようだ。youtubeで彼の演説を聞いて興味を持ったので観に行ってみた。
 山本太郎にしろ三宅洋平にしろ止むに止まれぬ気持ちで出馬に至ったことは解るのだけど、俺はアーティストが選挙に出馬することに対しては一貫して懐疑的である。幾ら掲げている理想が魅力的だとしても、政治家っちゅうもんはそんな一朝一夕でなれるのかね?ってどうしても思ってしまう。その気持ちは変わらなかったし、三宅洋平に投票はできない。けれども彼は素晴らしかった。アーティストがスーツを着て政治家に成る、のではなく、アーティストのまま政に参加しようとしているように見えた。いや、もうすでに彼はそれを為していると思った。もちろん高い供託金を払い全国を駆けずり回っているわけで、このような物言いはもしかしたら意に沿わぬものかもしれないけれど、三宅洋平という人が選挙に出たこと、当否は関係無くそれ自体が素晴らしいことなのではないかと思うのだった。既存の政治家がしてこなかったアプローチの仕方で政を考える層を拡大しようとしていることは素直に称賛できるし、俺は彼の正しさを正しいと思ったよ。その姿に心打たれた。歌の終わりに何度も言った
 「次は君の番なんだ」
 という言葉、それだけが彼の伝えたい事の本質であるとすれば、俺はその言葉をしかと受け止めたい。とかくこういう人を「中身が無い」だとか「胡散臭い」とか斜に構えて見る人がいるけど、俺、この人はそう思われることも計算に入れているような気がした。熱いけど、芯にすごくクレバーな物がある気がする。それでも何かを伝えようと精一杯表現してくれるなら、真摯に受け止めなきゃ。俺はただの聴衆だが、ただのお客さんにはなりたくないと思うよ。
 俺が三宅洋平に興味を持った演説の映像はこちら。

灰野敬二

 BOADRUMと同じくらいぶっ飛んだ。前半、ノイズの海と光の矢が織り成す幻想的な光景はまるで母胎の中にいるようで、ずっとふわふわしてた。めちゃめちゃ気持ちいいの。寝るかと思った。けれども灰野さんがマイクに声を通し始めた瞬間一気に空気が変わって、それからはもうただ音を受け止めることしかできなかった。
 「解らないものは、解らないと言え」
 まるで少年みたいな声で何度もそう叫ぶ姿は61歳のそれとは思えなかったよ。まさしく目の前にあるものが何だか解らなかったけれど、でもそこから背を向けようとは思えなかったし、圧倒的な音の奔流に立ち尽くすことしかできなかった。なんだかわかんねえけど、とにかくロックンロールだと思った。神様でした。BOADRUM、瀬戸内寂聴と並んでベストアクト。若者頑張らなきゃな。

坂口恭平

 幻年時代読めってことだろ!って感じ笑 坂口さんは追っかけてるから特に言うこともなく、いつも通り。TRAIN-TRAIN歌ってくれて、ちょっと泣いた。俺の心に響く良い歌唄える人が素晴らしくない訳がないのであった。
 九龍ジョーさんと磯部涼さんの保護者っぷりが良かったなあ。社会からはみ出る人を無理やり社会の枠に押し込めることなく、その人の良さが一番引き出る形を模索して提示してあげるということを自然にやっている感じ。仲間ってああいうものだと思う。なんでもかんでも型にはめて抑圧することが正しい訳じゃないんだ。だいたいからしてはみ出ちゃう人ってのはもうすでに抑圧されまくりながら生きてる訳なんだから、そこからさらに抑圧加えるとかお前鬼畜かよ、と思ったりすることしきりなのである。


 で、タイトルに書いた「太陽の孤独」というワードについてなんだけど。優れた表現者というのはあまねく太陽のようだなあと思ったのです。

 寂聴さんの話が終わった時「なんかよくわかんねえなあ」って笑ってる人がいた。BOADRUMの最中に「…うるさいだけだな」と呟いて去っていった人がいた。三宅洋平のとこにはもう書いたけど「自分に酔ってるだけ」とか「胡散臭い」って言う人がいた。灰野敬二が命燃やしてるの観てげらげら笑っている人がいた。

 別にそれが悪いだなんて思わんし、感じ方は人それぞれだし、押し付けがましいのは俺も嫌いだ。でも「伝わらないことを織り込み済みにしながらそれでも何かを表現する」ということの壮絶さだとか、そんな綱渡りみたいな一縷の望み(もしかしたらそんな望みすら考えてないのかもしれない!)だけであそこまでのことをやってのけてしまうという人間の凄まじさを、このFREEDOMMUNEで感じたんだよ。
 だから、ほんとに俺はいち個人として、太陽の暖かさに甘えるだけではいたくないし、彼らが俺に与えてくれたものをどう消化して昇華させていくかを考えなきゃなって、そんなことを思ったのでした。ただのお客さんではいたくないね。そんなのクソだね!

 とかまあそんな感じでDOMMUNE楽しかった。主催者、出演者、スタッフの皆さんに心から感謝を。