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<life>fool</life>

愚者の人生。

『かいじゅうたちのいるところ』

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~あらすじ~

いたずら好きなマックス(マックス・レコーズ)はいつものようにママ(キャサリン・キーナー)とケンカして、外に飛び出してしまう。ふと気付くとボートに乗っていたマックスは、海を渡り、ある島にたどり着いていた。島に住んでいる怪獣たちはマックスを見つけ、王様に仕立て上げるが……。

かいじゅうたちのいるところ [DVD]

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 原作は超有名な絵本、子どもの時に読んだことのある人は多いんじゃないかな。少なくとも表紙や名前を観たことも聞いたことも無い!って人の方が少ないんじゃないかと思う。とはいえ原作の絵本はそんなに長いものでもなく、数分で読めてしまうものなので、設定と登場人物を基にお話を膨らませた感じ。

 

 まず特筆すべきはかいじゅう(あえて平仮名表記します)たちの造形の完璧さ!顔の表情だけCG処理して、きぐるみを使った英断に拍手したいよ。怖いんだけど可愛いっていうバランスがほんとに上手いし、きぐるみ自体の作り込みもしっかりしているので違和感を感じない。実写でやった意味がある作品だと思う。マックスとかいじゅうたちが、美しい自然の中を駆けまわって遊ぶ映像は、それだけでほんとにハッピーな気分になれた。実際観てる時幸福感やばかったもの。終始にやけてた。

 マックス役の子のキャラ作りも完璧。もう自分が幼い頃を観ているようで、どんなワガママや無茶をやらかしても、腹は立たない。あの年頃の子どもというのは、大人から見ると訳分かんねえよ!って行動の裏にもちゃんとした理由や動機があるんだよね。良くも悪くも心のままに行動する。良いか悪いかの判断なんて、できなくて当たり前なんだ。そういう「子どもの心理」を上手に描いているところにとても好感が持てた。

 あとは、物語を彩る劇伴音楽がとても素敵。ヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oがやってんだね。特にエンディング曲は素晴らしかった。サントラ欲しい。

 

 で、この映画、ターゲットはおそらく原作を読んで育った大人なんじゃないかと思うんですよ。もちろん子どもが観ても、かいじゅうたちとマックスが仲睦まじく遊ぶさまは単純に胸が躍るだろうし、ある程度分かりやすく教訓もある。ただなんというか、ちょっとした台詞やかいじゅうの微妙な表情の機微なんか、大人向けだなあーと感じるところが多々あって。なので、子ども向けののんびり観られる映画だと思って視聴すると少し期待したものとズレてしまうかもしれない。複雑な気分になったり、現実と照らし合わせてげんなりしてしまったりする部分もあるし、それらを登場人物たちがどう受け止めるのか、が主題になっていると思うので。

 なのでこれから観ようかどうしようか迷っているって人に対しては、それなりにビターな映画ですよ、と言っておく。僕は好きでした。

 物語の最初の方で、かいじゅうたちとマックスが初めて出会う場面、とてもとても素敵な台詞があって、それだけで心が射抜かれた。

 「さみしさを埋める方法は?」

以下ネタバレ感想

 

 

 

 

 

 

 

  キャロルがね、可愛すぎてね、もうだめ。

 マックスにお手製の模型見せるシーンとか、「俺の味方は俺だけだ」とか、最後の雄叫びとか、常に寂しそうな表情とか、不器用さとか、全てがツボなんだよ!!!

 とりあえずそれだけ言いたかった。

 

 真面目な話すると、この映画は「寂しさ」についての映画だと思うんです。上に書いた素敵な台詞は、「自分は王様だ。なんだってできる!」と嘯くマックスに対して、かいじゅうたちが求めること。なんだけども、劇中それは見つからない。というか、無いんだよね。そんなもの。

 孤独感を感じたことのない人間はいないと思う。それを埋めるために仲間や家族を作ったり、人と愛し合ったりするけれど、カンの良い人は気づいてしまう。どうしたって埋められない孤独感ってのがあるってことに。エスパーにもサトラレにもなれない我々人間には、100%理解し合うなんてことは不可能なんだってことに。だからマックスにはどうにもできなかった。でもそれは誰にもどうにもできないんだよな。だからそれでいいんだよ。だからこその最後の別れの場面なんだよ。

 マックスがキャロルに最後に残したメッセージ。してもらって嬉しかったことを、そのまま返してくれた、最高の行動。それにもう一度応えるべく、浜辺まで走ったキャロルの最後の遠吠えは、100%は分かり合えないけれど、一瞬でも重なり合える瞬間があったことに気づけた証なんだ。

 「たべちゃいたいくらい好き」って台詞がある。食べるってことは相手を自分の中に取り入れる行為であって、ものすごくエゴイスティックなんだよな。寂しさを埋めたい、一人で居たくないって気持ちが暴走すると同化願望に変わってしまう。私だけを見てて!ってやつ。かいじゅうたちはずっとずっとそうやって失敗してきた訳だけど、マックスの存在によって、初めてそれ以外を見つけられたんだと思う。

 

 劇中、はっきりとした成長や解決が描かれてないって意見もあるみたいだけど、僕はそれには全く賛同できない。本質的な孤独を受け入れることの大切さが描かれたとてもいい映画だと思うよ。マックスも、かいじゅうたちも、大きく傷ついて、そして成長するさ。傷つくもんなんだよ。それでいいんだ。

 と、「寂しさ」に特に重点を置かれている(と思う)本作ですが、ほんのりと母親という存在の偉大さの再確認をするシーンや、他者の存在を通して我が身の未熟さを悟るシーンなど、身につまされることは多いです。それでいて説教臭さは微塵もないのが素敵。

 

 大人のふりしてるけどさ、みんな昔はマックスだったし、今もまだマックスなんだよ。「子ども嫌い」なんて公言するような輩はロクな奴じゃないと昔から思ってる。何が言いたいかっつーと「マックスの行動が見ててイライラした」なんてレビュー書いてる奴は全員地獄に落ちてしまえ!!!てことなんですけどね。